生坂村おやきの旅

2002年06月01日(土)


今年の「天然酵母サミット」のときに、 粉食文化研究会 代表の S氏との話の中で「おやき」に関する話題が出てきた。 S氏はパ ンの職人なのだが、パン以外にも蕎麦、うどん、おやきといったいわゆ る粉食全般に対しての関心が強いようである。私はここ何年かおやきを 食べ歩いているので、それほど多くはないがデータの蓄積はある。そこ で「私の知っている範囲でよければ案内しましょう」ということになっ た。

希望を聞くと「灰焼き」がいいらしい。灰焼きのおやきは、私が知る範 囲では犀川と高瀬川の間の三角地帯に集中している。長野市の西側のい わゆる「西山地方」と呼ばれる地域、北安曇郡、東筑摩郡あたりである。 しかし、店として一般に灰焼きのおやきを売っているところはそれほど 多く見つけられていない。日程の折り合いから土曜日の午後になること が確定的の為、短い時間でそれなりに店を周れそうというところから、 その中でもおやき店密度の高そうな生坂村をターゲットにすることにし た。

行ってみておやきがない、というのも辛いので、前日に電話で確認して みたところ、「民宿かいざわ」は「農作業の為明日はおやきを作らない」 ということで駄目だったが、「かついえ」と「わらく」はOK。まあ、と りあえずこの 2軒に行ければよいだろう。それにしても「民宿かいざわ」、 「かついえ」から歩いて50歩も行かないところにあるので「かついえ」 に行くと必ずのぞいているのだがいつも閉まっているし、今回も「昨日 までは作っていたんだけれど」。この相性の悪さは一体なんだろう? 次 は電話かけて作っている日に行こうと思う。

06月01日はきれいに晴れて日射しの強い、非常に暑い日になった。13時 田沢駅集合にしたので、少し早めにと思って12時半頃着いたら S氏は既 にそこにいた。早く着いたので「うしこし」に行ってきたとも言ってい る。私の Webページの記述を頼りに行ったらしいが、あれでよく行けた ものだなあ、と思う。それにしても S氏、本業のパン屋は大丈夫だった んだろうか?

予定より早く行動開始できるので、まず「赤羽おやき店」に行くことに した。国道19号とは犀川をはさんで反対側の、田んぼや畑に囲まれた斜 面にある店である。「店」といっても農家の納屋の一角でおやきを作っ ている、というだけのことで、見た目は本当に農家。小さな看板を見落 とさないように注意しなければならない。 S氏は「讃岐うどんの世界と 共通するものがある」と言っている。

Akahane

「おやき店」のエリアをのぞいても誰もいないので、本宅に声をかけた らおばさんが出てきた。「しめじ入り茄子」があるということなので、 買う。ここのおやきは灰焼きではなく、鉄板で焼き目をつけてから万能 鍋をひっくり返したような釜? で焼くものである。灰焼きのよりは薄め の皮の表面がぱりっとしていて香ばしいのが特徴である。基本的には注 文生産らしいのだが、生坂村の特産物ガイドにも載っている為か地元だ けでなく遠方からの注文も結構あるらしい。釜一つで一度に5〜7個しか 焼けないということなので、注文が多いときには大変なようだ。茄子の 他には野沢菜("漬け菜"と言っていた)、小豆餡、そして秋から冬にかけ てはおからや白菜があるということ。是非おからを食べてみたい。


出発まぎわに、おばさんから夏蜜柑をもらった。前回に来たときは確か キウイをもらっているのだが、私は非常にありがたいけれどでも申し訳 ない気もする。お礼を言って出発。北上して次は「かついえ」を目指す。

「かついえ」は、国道19号の旧道から犀川を渡って少し北上したところ にある。昼過ぎには焼くのをやめて午後2時か3時には店を閉めてしまう ようだが、朝電話かけておやきを確保してあるので安心だ。店に行くと 明日の準備をしていてもうおやきは焼いていなかったが、私が確保した 分はしっかり保温されて待っていた。今日買ったのは茄子と野菜ミック スと小豆餡。小豆餡は初めてである。

Katsuie Katsuie

中をのぞいていたら、入ってきてもいい、というので、見せてもらう。 人一人が余裕で寝転べるような大きさの木枠の中に灰が厚く敷いてあり、 それを下からバーナーであぶる構造になっていた。この灰の中におやき を埋めることで、いろりの灰で蒸し焼きにする、ということを再現して いるようだ。この灰の中には 160個おやきが入ると言っていた。それを 一日に何度も焼くのだろうから、一体一日で何個のおやきを焼いている のだろう。灰箱のまわりはかなり暑く、いつもおじさんが *かなり* 薄 着をして灰を混ぜているのが十分納得できる。夏場はかなり大変だろう と思う。

そこから少し歩いて下って「民宿かいざわ」に行ってみるが、やはり閉 まっていたので諦めて出発。次の目的地は「レストハウスわらく」であ る。とりあえずもときた道を戻る。途中のダムを渡れると目と鼻の先な のだが、どう見ても水門上の道を渡れそうにない。そうなると国道19号 を少し戻って犀川を渡り、対岸の狭い道をまた北上するという U字型の ルート、細長い四角形の三辺を通らなければならない。何だか非常に損 した気分だ。

「わらく」に着いて中に入り、カウンターの中をのぞくと、灰の敷かれ た箱の中におやきが30個くらい埋まっているのが見えた。おばさんに声 をかけると「注文で作ったやつだから」と言うが、3、4個レベルなら大 丈夫ということなので、S氏と合わせて4個買う。具は茄子ということだ。 前日に電話で「おやきを買いに行く」ことは伝えてあったので、そのこ とを言うと「20か30位いるかと思っていたのでこのあと焼くつもりだっ た」とのこと。あれ? 私は「4個か5個のレベル」って言ったつもりだっ たんだが。まあ、入手できたからOKとしよう。伝え方が悪かったかもし れないので、キャンセルになってしまったことを謝る。灰箱の奥に大き な鉄鍋が見えたので聞いてみると、鉄鍋で少し焼いて表面を乾かしてか ら灰の中に入れる、とのこと。

Waraku Waraku

外の四阿に今日買ってきたおやきを広げる。大きな灰焼きのおやきが10 個も20個もごろごろ並んでいるのは非常に壮観である。それも、私達が 買った「かついえ」の野菜ミックスと小豆餡以外はすべて具が茄子であ る。 S氏は茄子が好きなのか、非常に喜んでいる。端から食べてみるが、 今日は何故か茄子が非常においしく感じる。それぞれの店で微妙に味付 けは違うのだが、それぞれが茄子と味付けの味噌とおやきの皮とが非常 にいいバランスを持っていておいしいのだ。気のせいかもしれないが、 「かついえ」はこれまでよりもやや濃いめの味に感じた。調子に乗って 食べ続けていたらかなり腹が膨れてきたので、残りは持ち帰ることにす る。

Today's Oyaki Today's Oyaki
左側二つ: レストハウスわらく
中央三つ: かついえ
右上二つ: 赤羽おやき店

時計を見ると午後 3時を回っている。これから四賀村に出れば「ドライ ブインしが」のおやきが買える。ここのも灰焼きなのだが、今日は腹一 杯になってしまったので次回にしよう、ということになった。今回はこ れにて解散。家に帰っても夕食は持ち帰ったおやき。まさにおやきな一 日だった。

「かついえ」の小豆餡は家に持ち帰って食べたのだが、やや甘め、でも、 そんなに強い甘さではない「ねっとり」が強いつぶあんがなかなか素朴 でおいしくて、それとおやきの皮ともよく合っていて、あんこものが大 好きな私にはたまらんおやきだった。次に「かついえ」に行く時は、ま ずこれの確保を忘れないようにしよう。


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